【セイコー5】 腕時計 SEIKO5の話し ベルト交換 #2 実装編

 【セイコー5】 腕時計 SEIKO5の話し ベルト交換 #2 実装編

今回はベルトの取り外し、装着について書いていこうと思います。前回の準備編では、社外品のステンレスベルトに純正クラスプを移植する作業を行いました。そこから先はどのように伝えれば良いのかと色々考えましたが、やはり一番分かり易いのは動画だと思います。ちょっと検索すればたくさんの参考になる動画がHITします。このブログでは動きを見せる事は出来ないので私なりに考えた結果、他の方々の「ベルトの交換方法」の解説とは少し異なる方向から解説してみようと思います。

 それとタイトルにある通り、私が今まで交換してきた【セイコー5】のベルトを対象としています。基本は同じだと思いますけど・・・

 ベルト交換方法の解説をされている皆さんは、道具の説明からベルトの取り外し手順、取り付けまでを丁寧に書かれている方が多いと思います。私は同じ事を書いても仕方がないので、構造的な所から画像を使って説明してみます。自分が最初にベルト交換を試みた時、工具をこの部品の何処に入れるのか、どのように動かして外すのか等、触れる部品の構造を理解していなかったので結構苦戦しました。なのでその辺りに的を絞って書いてみます。

 前回も書きましたが、私は革ベルトに興味が無いので金属製のベルトで解説します。基本、やり方は同じです。どちらかというと革ベルトの方が楽に交換出来ます。その辺は後で書きますが部品の構成が金属製の方が複雑ですし、革は柔らかいのでベルト自体に動きがあります。なのでこれから書く事が出来れば金属でも革でも交換は可能だと思います。今回はベルトの交換という事で、シンプルに見えるようにケースの中身は抜いてあります。上から「ケース」、「バネ棒」、「弓カン」、ベルトの順です。

SEIKO5の話し ベルト交換 #2 実装編

 まずはケースから説明します。丸で囲んだ部分に穴が開いています。手前の2か所も入れて計4か所です。この穴は時計によって外側まで貫通している物もありますが、私が今まで外したセイコー5のケースは全て内側のみで貫通している物はありません。この穴に次に出てくる「バネ棒」が取り付けられます。

腕時計 SEIKO5の話し ベルト交換 バネ棒

 これがバネ棒です。名前の通りこの部品はスプリングが両端を広げる方向に力が掛かっていますので、内側方向に縮める事でケースからベルトを外す事が出来ます。両端のうち、左側をズームしています。円筒状のパーツですが、2本の輪のような突起が見えると思います。ここに工具を上手く刺して内側に移動します。このバネ棒単体で見ると、とても簡単に出来そうですよね。ところがなかなかそうはいきません。

 こちらはベルト交換に使用する工具です。右の2本が「バネ棒外し」と呼ばれる物で、先端がアーチ状になっていてバネ棒にフィットするような作りになっています。色々なサイトで紹介されていますので、これからベルト交換にチャレンジするつもりの方はまず手に入れるアイテムなんだと思います。私もコレが無ければ始まらないと思い、最初に購入した工具です。

 しかーし!

 結果として、私は現在この右側の2本「バネ棒外し」は使っていません。

 その理由を解説します。画像では解説用で時計の裏面、丸で囲んだ6時側(下面)は弓カンが取り付けられています。構造的にはベルト先端の中コマと弓カンをバネ棒で連結しています。そしてバネ棒を外すには、裏面から見て弓カンの隙間(丸の部分)に工具を入れて縮めなくてはなりません。

 これは最初にネットで「腕時計 バネ棒外し」で検索し、購入したバネ棒外しです。工具が大きすぎて弓カンの隙間に入らないのです。失敗しました。そして、だったらもっと小さい物をと購入したのが3枚上の画像の右から2番目のバネ棒外しです。今度は隙間にはすんなりと入ります。しかし、先端が同じアーチ状になっているのですが、バネ棒の突起には小さすぎてうまく掛かりません。両端の「点」で当てる感じなので全く力が掛からないのです。

腕時計 SEIKO5の話し ベルト交換 バネ棒外し

 最終的に、現在はこの精密ドライバーのマイナスで一番小さいサイズを使用して外しています。私的にはこれが一番容易に外せます。

 私が一番伝えたいのはこの部分かもしれません。方法を学ぶ為に得た情報は全てではないという事です。道具を揃え、手順を説明し、完結。それは皆さん書いています。ですが、それを見て実践して得た私の経験は他ではあまり見かけないと思います。

 と、ここまでがケースからバネ棒を縮めて外すまでの手順になります。今回は最初からベルトが外れている状態での解説になっています。実際には最初はベルトが上も下もケースに取り付けられています。どちらからでも構いませんが、最初に外す片側は自由が利かないので結構苦戦すると思います。これは慣れと言ってしまえば簡単ですが、相当イラッとするかもしれません。それと、中古のベルトの場合は汚れや錆でバネ自体の動きが渋く、縮めるのに一苦労するかもしれません。力任せに工具を動かして怪我をしたり、時計に傷をつけたりしないように注意しましょう。

 さて、無事にベルトを外したら次は装着です。弓カンとベルトをバネ棒で連結し、ケースに収めるのですが、ここで重要な事があります。

SEIKO5の話し ベルト交換 弓カン

 金属ベルトと革ベルトとの違いでもあります、弓カンです。この弓カンにはサイズがありますが、それだけではありません。その辺に少し触れておきます。上の画像の左からケースに収まっている弓カンはケース幅19mmです。その右隣は20mm、そしてケースに収まっている物の相方の19mm、その右は18mmです。

 ケースの幅によってサイズが異なる事は理解して頂けたと思います。次に、ベルト、ケースとの相性です。まず、ベゼル周りというか、円周の形状が弓カンと一致するかどうかです。Rがきついか緩いかによって、弓カンに隙間が出来たり、逆にケースの先端と弓カンの先端に差が出来て段になってしまいバネ棒がはまらなくなってしまいます。私はジャンク品を購入したら弓カンは必ずストックして、出来るだけ形状の近い物をチョイスして加工します。画像の矢印は弓カンの凹部分とベルトの中コマ凸の寸法です。画像をよく見ると弓カンの凹部分の幅が物によって違っています。中コマの方が大きくて収まらない場合は多少の差なら削れば何とかなりますが、隙間がある場合は埋める事は出来ません。金属ベルトを新調する場合はベルトにセットで弓カンも付属されている事が多く、ケースとの寸法が合えばなんとかなるとは思いますが、次に書く事も念頭に入れて置かなければなりません。

 こちらの画像は弓カンを真横から見た物です。弓カンの開き具合というか、角度が違います。これはケースの形状に合わせた作りになっているからで、この隙間が少ないとケース裏に固定する爪の部分がケースに掛からない事や、正面から見ると上手く収まったと思えても横から見ると凹んでいたり出っ張っていたりする事があります。

 このように、金属製ベルトでは「弓カン」のフィッティングがとても重要になります。

 全てが整ったらいよいよ装着です。装着は外すよりも楽だと思います。まずベルトと連結した弓カンを指で押さえながら、バネ棒をケースの穴に片側だけ差し込んで、反対側を縮めて入れるだけです。前回のクラスプと同じ要領です。これは外す時に書き忘れましたが、取り付け時も同様にバネ棒は縮めるとかなりの弾力があります。完全に外す瞬間は勢いよく飛んでしまう事がありますので予備が無い場合は紛失注意です。私は数種類のサイズを新品でストックしています。外れにくいバネ棒はちょっと力技で外して曲げてしまう事もありますし、次に外す時に新品の方が楽ですから。新品のバネ棒は数本単位で数百円で売っています。

 それと最後に最終確認です。しっかりとバネ棒をはめたつもりでいても、実際は掛かりが悪く暫くすると外れてしまう事があります。私も何回か経験しましたが、装着後は何度もベルトを動かしたり引っ張ったりしてしっかりと取り付けられている事を確認すのは必須です。

 以上、私的なベルト交換についてを長々と書いてみました。とても綺麗な文面とは言えませんが、誰かのお役に立てれば幸いです。